【記事】
本書は2007年に玉井真理子先生の編集,福嶋義光先生の監修の下で上梓された「遺伝医療と倫理・法・社会」の続編として企画されたものです。2007年は次世代シークエンサーが本格的に上市された年であり,この年を境にゲノム解析のコストは格段に低下し,遺伝学的検査の一般診療化,多遺伝子パネル検査の普及,NIPTの実用化,ゲノム編集の製薬などへの応用など,加速度的に遺伝医療/ ゲノム医療は進展しました。その一方で遺伝情報に基づく差別や偏見などへの対応は置き去りとなっていました。そして,2023 年に「良質かつ適切なゲノム医療を国民が安心して受けられるようにするための施策の総合的かつ計画的な推進に関する法律」が成立し,社会体制の整備の本格化が見えてきたところです。
科学技術の進歩は多くの恩恵をもたらしてきましたが,その裏側で様々な課題が生み出されます。これらの課題に対して,私達は対応を考えなくてはなりません。今回の新版の作成にあたり,様々な分野におけるトップランナーの皆様に執筆を依頼しました。現状を俯瞰し,これから生じる課題への対応に向けて,本書が役立つことを期待しています。