【記事】
人生の途中で重い病いや障がいをもつことは、身体的な痛みだけでなく、精神的・社会的な痛みを伴う。今までとはまったく異なる世界に連れ込まれたような気持ちになり、「希望」を失い、「絶望」の状況に追い込まれる。
やがて危機としてしか捉えられなかった脳卒中の後の現実を、人々は自分のものとして受け入れてゆく時がくる。〈生きる〉ための試行錯誤において、人々は医療専門職や家族や同病者などの他者と決定的に重要な関係を切り結ぶ、つまり「出会い」がある。人々は何年も、時には10年以上も,先が見えないトンネルの中を歩くような気持ちで日々リハビリ訓練に励み、新しい身体に慣れつつ、新しい生活をつくり上げ,〈生きる〉という方向に向かおうとしている。
医療専門職になることを目指す学生、現場を志向する医療社会学などを学ぶ人が、脳卒中者の新しい自分をつくり上げようとする過程を学ぶ人生のテキストにもなっている。