【記事】
救急救命士国家試験の状況設定問題(C・D問題)について、どのように取り組んだらよいのかわからないという声を聞く。さもありなむ、と思う。状況設定問題を解くとは、すなわち症候学の実践である。症状や徴候(症候)から出発して病態を推測する。救急現場で傷病者に対応する場合も同様である。ところが、今の救急救命士教育は症候学を重視しているとはいい難い。国家試験出題基準をとってみても、救急症候学に割かれているのはわずか8頁、全体の1割程度に過ぎない。症候学が解剖や病態生理など、さまざまな知識のうえに成り立つものである限り、解剖や病態生理を優先させるのはやむを得ないのかもしれないが。
腹痛・背部(腰)痛はありふれた症候でもあり、厄介な症候でもある。厄介な理由は、腹部には多くの臓器があること、痛みが発現する部位が必ずしも傷害臓器の位置と一致しないことにある。しかし、痛み発現の機序を体系的に理解できれば、この問題の多くは解決する。
本書が腹痛・背部(腰)痛に関する悩みを解決するための一助になることを期待する。
なお、第2弾は循環器疾患である。