【記事】
立位姿勢は、身体重心位置が高く、一方で支持底面は狭く、力学的には非常に不安定ななかで、種々の感覚情報を基に重心を安定に維持する制御機構が必要とされる。また、歩行や走行における重心の動的な平衡を維持するためにもやはり種々の感覚情報に基づく肢及び体幹の骨格筋の適切な活動が必要である。このような姿勢や歩行における重心の位置の制御が何らかの原因で機能的に障害が引き起こされた際に生じるのが「躓き」や「転倒」と考えられ、現在までに、転倒などを引き起こす身体機能において骨格筋の萎縮等について着目していた研究は数多く報告されているものの、脳における機能障害やそれに対するリハビリテーションから転倒の発現に関わる神経機序と予防のための運動等について学術的に概説あるいはまとめたものは内外でもほとんどない。そこで本書は、「転倒や躓き」に関わる神経機序の解明に向けて、姿勢や歩行運動における神経機構やリハビリテーションについて最先端の研究から論考することを目的にまとめられた。