【記事】
わが国では、治療薬の開発と普及に伴って小児喘息の入院数や喘息死は減少しました。しかし、有病率は依然として高く、不十分な管理により容易に重症化してしまいます。本書の目的は、わが国における小児喘息の標準的な治療・管理方法を提示し、喘息児のQOL を改善させるために必要な情報を医療者に提供することです。前版である2020年版などを踏まえて、2023年版(JPGL2023)では次の点などを変更しました。
・新たに2つのクリニカルクエスチョンを採用しました(「小児喘息患者の長期管理において、自宅のダニアレルゲン対策は有用か?」「乳幼児のウイルス感染による初回喘鳴の治療に、ステロイド薬は有用か?」)。
・病態や疫学の最新の知見がわかるテキストブックとしての役割(第2章、第3章)と、実践的なガイドラインとしての役割(第4章以降)が区別できるように章立てを再編しました。
・診療の場で参照されやすいように、喘息の急性増悪(発作)に関わる危険因子とその対策を第6章として別途記載しました。
・添付文書の変更などを踏まえて、5歳以下の追加治療に吸入ステロイド薬/長時間作用性吸入β₂刺激薬配合剤(ICS/LABA)を加えました。また、6~15歳においては、治療ステップ3と4でのICS/LABAの位置づけを変更しました。その他、生物学的製剤に関する記述も増やしました。
・患者との共同意思決定(shared decision making)のプロセスの明示や、吸入補助具であるスペーサーに求められる要件や課題についての記載など、長期管理に関わる記述を増やしました。
・用語を整備しました〔運動誘発気管支収縮(exercise- inducedbronchoconstriction, EIB)、誘発性喉頭閉塞症(inducible laryngealobstruction, ILO)〕。