【記事】
このたびは本書『まるごとアトピー』を手に取ってくださりありがとうございます.この本は診察室の机に並べておけるアトピー性皮膚炎のハンドブックという位置づけでつくりました.皮膚疾患は多彩なうえ,近年の新薬ラッシュの影響を受け,情報をキャッチアップするのも大変です.私自身,自分の専門外の疾患に関しては最新の治療を行えているのか自信がないこともあります.アトピー性皮膚炎の治療は急速に進歩し,どうなっているのかわからなくなっている先生もいらっしゃるのではないでしょうか.本書は治療に難渋する患者さんが受診したとき,パッと手に取り,すぐに調べられるような体裁となっています.
外来で患者さんから聞かれる内容は薬のことだけではありません.日常生活に関する質問を受けることもしばしばです.「食べちゃいけないものはありますか?」「空気清浄機はあったほうがよいですか?」「体を洗うときに石鹸を使ってもよいですか?」,これら患者さんからの素朴な疑問に対して答えに詰まり,ごまかした返事をしてしまうこともあるでしょう.もしくは最新の論文を確認せず,古い知識のまま答えてしまう場面はないでしょうか? 本書は,そういった日常診療で受ける質問に対するエキスパートの答えが散りばめられた内容になっています.私自身,集まった原稿を読ませてもらい,大いに勉強になりました.正直なところ,アトピー患者さんの化粧指導や漢方の使いかたは,本書をまとめるまで十分に理解できていなかったように思います.ほかにも,ステロイド忌避の患者さんへのコミュニケーション法,また,近年注目されている行動経済学を取り入れた患者指導など,病態から診察テクニックまで本書では幅広く取り上げています.
『まるごとアトピー』というキャッチーな題名とは裏腹に,中身はいたって真面目で盛りだくさんです.果実のように栄養がぎっしり詰まった本書をぜひ日常診療に活用していただけたら幸いです.