【記事】
がん薬物療法の進歩によってがん患者の予後は著しく改善されたが,がん薬物療法に伴う多彩な腎障害は日常診療上の大きな課題として残されている。がん患者の腎機能が低下すると,その後の化学療法を受けにくくなり,生命予後やがんの完全寛解率が低下する。したがって,がん薬物療法に伴う腎障害のリスクを正しく認識し,回避することはきわめて重要である。
本ガイドラインの初版から6年が経過し,免疫チェックポイント阻害薬や分子標的治療薬の使用機会が増えるとともに,われわれが遭遇する腎障害も大きく変化したことから,本ガイドラインを改訂することとした。初版刊行後に広く認識されたCQや,今後臨床試験が行われる見込みが少ないCQを4つのGPS(good practice statement)へと変更し,免疫チェックポイント阻害薬や分子標的治療薬に関連した新たなCQを加え,計11のCQを設定した。加えて,本領域には複数分野の医師が関与することから,背景疑問を明確に定義する目的で16の「総説」を新たに記載した。
さらに,実用性を考慮して全体を,「第1章 がん薬物療法対象患者の腎機能評価」(治療前),「第2章 腎機能障害患者に対するがん薬物療法の適応と投与方法」(治療前),「第3章 がん薬物療法による腎障害への対策」(治療中),「第4章 がんサバイバーのCKD治療」(治療後)の4章にまとめ,がん診療の時系列に沿った構成を採用した。特に,第4章は初版には含まれていない内容だが,がんサバイバーの長期予後が改善される中,臨床的意義が大きいと考える。