ガリレオの中指 科学的研究とポリティクスが衝突するとき
【目次】
序章 私のお守り
第一章 奇妙な見かけ
第二章 ウサギの穴に迷い込む
第三章 複雑に絡み合う糸
第四章 「ショー・ミー」の州にて
第五章 学会内部の腐敗
第六章 闇の奥へ
第七章 危険なビジネス
第八章 保護なき被験者
第九章 歴史は繰り返される?
終章 真実、正義、そしてアメリカ流
エピローグ ポストカード
あとがき なぜノースウエスタン大学を去ったのか?
【記事】
著者アリス・ドレガーは科学史・医学史を専門とする歴史学者であり、インターセックスの権利の確立を求める活動家でもある。ドレガーは、アメリカにおける学術研究や医療を取り巻く事実と証拠の軽視、ひいては学問の自由の危機に警鐘を鳴らす。
インターセックスへの医療的介入、トランスジェンダーや性行動に関する科学的研究、人間の本性に関する人類学的考察といったテーマは、アイデンティティやイデオロギーの観点から物議をかもしやすい。論争の果てに、悪とみなされた研究者たちは、地位を追われることさえある。その姿は、宗教裁判で有罪とされたガリレオさながらである。しかし果たして、そうした「有罪判決」は事実にもとづいていたのだろうか? 必ずしもそうではない、とドレガーは述べる。ポリティカル・コレクトでない研究結果だからといって真実ではないわけではないし、ポリティカル・コレクトな主張だからといってそれが真実だとは限らない。
事実にもとづかない告発に脅かされる研究者や、科学的証拠にもとづかない医療の不利益を被る患者のために、なにが守られるべきなのか。真実を希求した一人の研究者による、渾身のルポルタージュ。日本語版刊行に寄せた著者による序文も収録。