【目次】
第1章 外側でも、内側でも、どこででも
第2章 時間と永遠を重ねる
第3章 後代のための音楽――ヴォルフガング・パウリの「ピアノ・レッスン」
第4章 終末のためのレクチャー――「書物なんかじゃありません。パンです」
第5章 悪の問題
第6章 心の創造性について
第7章 変容の瀬戸際で
第8章 個性化の坩堝(るつぼ)の中の失敗
第9章 心理学的次元におけるイマーゴ・デイ
第10章 ユング心理学とプロテスタンティズムの精神
第11章 文化の溝を越える元型
第12章 東洋が西洋と出会う場所:個性化の宿にて――河合隼雄の思い出に捧げる
第13章 象徴から科学への道のり
第14章 文化的トラウマ、暴力、治療
第15章 人類の個性化における激動の時代――ロブ・ヘンダソンとの「エンタービュー」
第16章 症状が象徴であるとき
【記事】
「人間は未完成であり、方向性や運命を選択するかなりの自由を所持している。だからこそ、人間には目指すべきモデルや追求すべき目標が必要だ。文化、宗教、哲学などはその指針となるイメージを提供する。ユング心理学もそうだというのが私の主張である」
かつて、心と世界はひとつだった。しかし近代化とともに、西洋の啓蒙主義によって自己と他者、内なるものと外なるもの、「わたし」と「あなた」は隔てられ、私たちの心と世界は分断されてしまった。
ユングはその切り離された心と世界を越境する術を、さらにはもう一度結合する術をも探究していた。シンクロニシティ・変容・個性化という本書を通底する要素をみれば、ユング心理学がけっして心理療法の技法としてのみ発展を遂げてきたのではないことが、鮮やかに実感されるだろう。
貧困、環境問題、そして全世界を巻き込みつつある暴力……。いま、ふたたび心と世界をひとつにするには――他者を自己のように思いやるには――私たちに何が必要か? 災害やテロリズムなど現代的なトピックに触れながら文化を超えて世界をとらえる、ユング派分析家の国際的リーダーによる最新論集。