生殖技術と親になること 不妊治療と出生前検査がもたらす葛藤
【目次】
はじめに
序章 生殖技術の進歩は社会に何をもたらしたか
第1章 生殖補助技術をめぐる政治――法制化は誰のためなのか
コラム 卵子提供を受けた夫婦
第2章 精子提供・卵子提供による生殖補助技術――「新しい家族」の課題
第3章 精子・卵子・胚バンクについて――延長する身体
第4章 卵子提供で子どもをもつ理由――ささやかな欲望と選択
コラム 人工授精技術と親子
第5章 新型出生前検査(NIPT)と女性の選択・責任――「いのちの選別」か
第6章 新型出生前検査が可視化する日本社会の課題――中絶をめぐって
第7章 出生前検査の市場化――その歴史と問題
コラム 不妊に悩む人に
第8章 子宮移植の臨床研究開始を前に――技術と倫理のはざまで
終章 生殖技術を使って親になることを推奨する社会について
【記事】
生殖技術をめぐる状況は大きく変化している。子どもをもつための生殖補助技術だけでなく、胎児の病気や状態を検査する出生前検査の広がりによって、親になる人が抱える葛藤も大きくなっている。
新たな生殖技術の登場は、今までになかった悩みをうみだした。子どもが生まれる希望や、安心のための技術が、難しい選択を迫り、その責任は親になろうとする人にゆだねられる。選択することとしないことの背景には様々な事情や理由があるが、社会はそれを受け止めているだろうか。
日本では少子化対策という位置づけで、生殖補助医療の保険適用が実施される予定である。だが、第三者の精子提供や卵子提供によって生まれた子どもの「出自を知る権利」、精子・卵子・胚バンクの運営や情報管理、代理出産の法的位置づけなどはいまだ定まっていない。
ますます進展する生殖技術と、技術を望む人の気持ち、その背景にある価値観、医療、法律、政治、そして社会とのかかわりとは。生殖補助医療と出生前検査をめぐるさまざまな葛藤を照らし出し、全体像を描く。