【目次】
第1章 中医学における昇降理論とは何か~その特徴と臨床における意義……(1)
第2章 中医昇降学説の源流……(15)
第3章 生命活動の基本形式としての昇降運動……(47)
第4章 人体昇降運動の中核を担う臓腑……(67)
第5章 昇降・出入運動の経路・門戸~経絡兪穴~……(125)
第6章 昇降運動の失調は病理の要……(137)
第7章 昇降・出入運動の分析は弁証の原則……(195)
第8章 昇降・出入運動を調える治療法……(209)
第9章 薬物運用における昇降浮沈の薬性とその応用……(441)
第10章 昇降運動を調整する合理的な薬物配合……(499)
第11章 昇降流注における兪穴の基本的な性能……(555)
第12章 昇清降濁・出入開闔に基づく配穴処方と刺鍼手技……(577)
第13章 昇降運動を調整する際の注意事項……(615)
【記事】
人は自然界の中にあって呼吸し、飲食物を摂取し、消化・吸収・排泄しながら生命活動を営んでいる。それら生命活動はすべて人体における昇降・出入運動として総括できるが、臓腑はその昇降・出入運動の動態バランスを維持する上で中核を担っている。そして病とは人体における昇降・出入運動の障害であり、その昇降・出入運動の障害を調整し正常な動態バランスを回復させることが治療であり、これこそが漢方治療・鍼灸治療の本質である。しかし、ともすれば治療に際してこの視点が意識から漏れてしまってはいないだろうか。
中国の歴代名医達はこの昇降・出入理論の観点から重要な臨床口訣を遺してきている。著者による1990年刊『中医昇降学』は中国伝統医学史上に散在するそれら昇降・出入理論とその診断治療をはじめて体系化・学説化した書として中国で高く評価され、中国伝統医学の歴史に名を刻んだ名著である。
本書はその刊行から30年の歳月をかけて我が国在住の著者が、日本の東洋医学医療事情を背景に臨床運用に有益な内容を加筆、その後の新たな研究成果を併せて大幅に増補改訂した日本版である。
臓腑・表裏の昇降出入障害の把握、重要薬物の昇降浮沈の性能、繁用方剤の昇降出入の性能ベクトル、昇降出入理論に基づく経絡兪穴の性能など、本書の内容は我が国の漢方臨床・鍼灸臨床において実用価値の高い内容を網羅している。昇降・出入理論を踏まえて治療に臨むことができれば治療効果は一段と高まる。