【記事】
世界は不確実性に溢れている.科学の進歩や医療の近代化は,不確実性を克服しようとする人類の歴史とも言えるかもしれない.しかし,それによって獲得した確率と未来予想性は,私たちの未来を明るく照らしただろうか?医療はますます高度に分化していく中で,このまま医療が進歩しても,救われない問題がじっとり横たわっているのではないかと感じている医療者は,実は多いように思う.
むしろ不確実性は人類の宿命であると同時に,人が人らしくあるために必須の要素とも感じる.私たちの人生や未来の社会が100%予測可能なものであったら,これほどむなしいものはない.
本書はそういった不確実な医療現場を正面から見つめ,不確実性を抱える患者への優しさに溢れている.家庭医療を志す者にとっては必須のスキルを提示してくれるであろうし,真摯に患者の困難と向き合う医師にとってはまたとない助け舟となるだろう.