【記事】
合成生物学は研究室の枠を越えて,世間でも活発な議論を呼んでいる成長著しい科学技術分野です。さまざまな環境問題やエネルギー問題,再生医療などの分野で幅広く活用できると大きな期待も寄せられています。しかし,バイオテクノロジーの新たな発展は,倫理的な議論にも火をつけやすく,一部の人によって大きく非難されてきているのも事実です。また,人によってつくられた生命に対する有害な社会的・政治的反応が実際に起こりうると恐怖を感じている人すらいます。
本書は,環境や健康,工学的利用や基礎研究をはじめ,文化に与える影響などで章を立て,合成生物学の真の姿を描き出しています。急速な発展を遂げる「合成生物学」は,人間がもたらした環境破壊,そして崩れつつある生態系を打開できると著者は述べています。また人間の進歩だけではなく,地球を回復させる手立てとなるかもしれないという,合成生物学の可能性を解説しています。そうした合成生物学に関して知っておきたい興味深い内容をコンパクトにまとめた,入門書として最適の一冊です。