【記事】
『腎癌取扱い規約第4版』が出版されて9年が経過しました。この間,腎癌治療は大きく進歩いたしました。薬物治療では分子標的治療がさらに進歩したことに加え,新たに免疫チェックポイント阻害薬が適応になりました。2020年からは転移性腎癌に対する一次治療は複合免疫療法と呼ばれる併用療法が主流になってきています。手術療法ではロボット支援腎部分切除術が広く行われるようになりました。取扱い規約には,このような治療の進歩に連動し,日常診療をしっかりと支える使命があります。具体的には,正確な術前診断と評価,最新の病理診断,薬物治療の客観的な治療効果とQOL評価です。各々,第1部の臨床的事項,第2部の病理学的事項,第3部の治療効果判定基準が該当いたします。このように,本取扱い規約は日常臨床に重要な最新の知見を過不足なく取り入れて構成されています。
腎癌の分子基盤が明らかになるとともに病理組織は細分化され,さらに複雑になったことは否めません。しかし,この複雑さは学問と医療の進歩の結果でもあります。本取扱い規約では,改訂された事項に注目し,整理してわかりやすく伝えられるように各所で工夫されています。日本泌尿器科学会・日本病理学会・日本医学放射線学会が合同して,わが国の腎癌研究と臨床の高いレベルを反映した第5版の取扱い規約ができたことに,日本泌尿器科学会を代表して敬意を表したいと思います。
最後になりましたが,本取扱い規約の作成にご尽力いただいた篠原信雄委員長,ならびに委員会の皆様に厚く御礼申し上げます。