【記事】
本書は、著者自身が開設した精神科病院における50年間の自殺例をすべて洗い出し、彼・彼女らはなぜ自殺しなければならなかったのかを精緻に分析したものである。患者さんは死によって何を訴えたかったのか。自殺した統合失調症圏、躁うつ病圏、境界性パーソナリティ障害など47人の背景、状況の綿密な調査・分析によって、それぞれの事例が自殺防止のための有益な手がかりを与えてくれる。また、後半では、地方都市の精神科病院という一定点から見続けた精神科医療の過去半世紀の変化と著者自身の地域精神科医療の歩みが紹介される。現在の精神科医療がどのような歴史の上にあるのか貴重な視点から知ることができる。