人体は流転する 医学書が説明しきれないからだの変化
ギャヴィン・フランシス・著・鎌田彷月・訳・原井宏明・監
【目次】
1 変わりゆくものを見つけに
2 狼人間 満月に激越をきたす
3 懐胎 存在する理由その一と二
4 睡眠 夢のありか
5 ボディビルディング たぎる血の行方
6 頭皮 角(つの)と恐怖と栄光と
7 誕生 心臓を手直し
8 若返り 若さと美しさの錬金術
9 タトゥー 変貌の術(アート)
10 拒食症 自制にとらわれて
他24
【記事】
〈生きていることは、終わりのない身体変容のただなかにいることだ。成長し回復しながら、適応し老化しながら、わたしたちのからだはどうしてもかたちを変えてゆく――そして、睡眠や記憶や学習によって、心も変わりゆく〉
生まれくること、死にゆくこと。それは始まりと終わりを意味するのではなく、どちらも人体が変わりつづけるプロセスにすぎない。それでも私たちは、古来より生と死に区切られた儚い時間のすべてを費やして、変化する身体とそれを受容する心を育みつづけてきた。
スコットランドの家庭医・フランシスの診療所にも、毎日のように変化に直面する人びとがやってくる。13歳で身ごもった少女、筋肉増強に魅せられた男性、新しい性別で生きることを決意した学者――。
今日、医学は私たちの身体をコントロールすることにおいて前例のない力を持っているが、その力にも限界がある。私たちは、けっして避けることのできない「変わりゆく自分」とどう共生してゆけばよいのだろうか。患者たちとのエピソードに、歴史・芸術・文学・神話の知識を織り交ぜながら鮮やかに描く、臨床医学的博物誌・第2弾。