【記事】
•行動・心理症状(BPSD)は認知症本人の苦痛や家族負担感が大きく、認知症の人の在宅生活を困難にさせるため的確な対応が求められます。BPSDの発症過程には心理環境面が大きく影響していることから、これらに対するアプローチが最も重要です。本書では、薬物療法の前に、BPSDの特徴や非薬物的対応についてふれています。
•非薬物的対応の効果が得られない場合や緊急性を要する場合には薬物療法が検討されます。BPSDに対する薬物療法は、症状を押さえ込むことが目的ではなく、本人の苦痛を軽減し、BPSDのために生じている生活のしづらさを改善することが目的となります。そのためには、安全への配慮が最も重要です。BPSDの治療薬の多くは適用外使用であり、とくに慎重な治療が求められます。薬物療法の適否の判断、より安全な薬剤の選択、効果と副作用の慎重な評価、薬物療法の終了にむけてのアプローチといった一連の作業が必要になります。
•薬物療法については総論と各論に分け、各論では各薬剤の効果や副作用、使用上の留意点などについて述べています。BPSDに対するガイドラインを紹介していますが、本書は基本的には安全性ガイドラインのスタンスをとります。ただしガイドラインで扱われていない薬剤も紹介しています。また実際の処方の仕方などにもふれ、実用的な内容になるよう配慮しました。
•認知症のひとにやさしい地域づくりの新オレンジプラン推進においてもBPSDの対応は重要であり、安全性に配慮した適切な薬物療法が求められます。本書が認知症の本人ならびに家族の支援や生活の質の向上の一助となれば幸いです。