【記事】
喉頭がんや下咽頭がんなどで喉頭を摘出すると声を失い、QOLが低下してそれまでの日常生活・社会生活に影響を与えます。がん再発の恐れを抱えながら発声機能を失い、生活も一変してしまうことは二重苦・三重苦となり、精神的に大きなダメージを負うことがあります。
失声後は声を取り戻すための方法として、食道発声、電気式人工喉頭、シャント発声の方法があり、これらは代用音声といわれています。
本書では声を失った方とそのご家族のために、欧米では主流となっていますが日本ではまだあまり知られていないシャント発声を中心に紹介しています。シャント発声は習得の容易性、発声持続時間の長さや自然性の高さから患者さんのメリットは大きく、社会復帰への大きな足掛かりとなります。実際にオランダでは、喉頭摘出後も多くの患者さんが社会復帰を果たし、手術前に近い生活を送っています。しかし、日本ではシャント発声の情報が少ないため、そのような方法があることを知らない患者さんやご家族が大勢おられます。代用音声にはそれぞれに一長一短がありますので、患者さんのライフスタイルや時代にあわせて一人ひとりに合った方法を、多様な選択肢のなかから見つけていただきたいと願っております。
また、喉頭摘出後は失声によるコミュニケーションが取れない苦しみの他にも、嗅覚機能低下、痰や息苦しさを伴う呼吸機能の低下など、多くの問題を抱えることになります。それらの問題への対応としてケアやリハビリ方法、患者会や行政によるサポート情報もご紹介しています。