【記事】
日進月歩の臨床皮膚科学から落後しないためには、緻密な情報収集と正確な理解が必須であるが、多忙な日常診療のなかで、常にすべての領域のアップデートは至難の業に近い。そんなとき、私はこれまで耳慣れないキーワードに遭遇したら、きっちり検証して、その意味と臨床的意義を頭の中のデスクトップに保存するという手法をとってきたが、なかなか時間と労力を要する作業であった。1997年に「キーワードを読む皮膚科」を刊行したのは、その技法を紹介したかったことと、その時点でのキーワードを整理しようと考えたからに他ならない。それから20年以上を経て満を持して企画したのが本書「最新キーワードで読み解くALL About 皮膚科学」である。
今回は、この数年の学会報告や論文を渉猟し、臨床皮膚科学におけるホットトピックと思われる100を超えるニューキーワードを厳選し、その領域の第一人者にまずキーワードの概説、その臨床的意義をコアメッセージとして簡潔・明快に記載していただいた。続いて、今回の企画のキモである「キーワードを読み解く」というサブタイトルで、このキーワードが日常診療でどういう意味を持ち、どのように活かされるべきかという視点からわかりやすく解説していただいた。最後に、さらなる興味のある読者向けに「読むべき文献3編」を挙げていただき、知的好奇心の充足を心掛けた。キーワードの概説に目を通すだけでも知識の整理には十分であろうが、可能な限り「キーワードを読み解く」まで目を通していただければ本書の有用性はますます高まると思われる。本書を通読するだけで、最新の臨床皮膚科学全般の進歩に精通できると思われるのが「ALL About 皮膚科学」と命名した所以でもある。
本書は私の210冊目の単行本となるが、いずれも臨床皮膚科学の最前線を一人でも多くの皮膚科医に明示するという確固たる信念に基づいて編集したものばかりである。そのなかで、皮膚科領域の新しいキーワードをインプットしていくことは地道ではあるが着実に皮膚科学の臨床的力量を増幅することに繋がると信じたい。企画・立案からほぼ半年で刊行できたのはひとえにご執筆いただいた先生方と熱意あるメディカルレビュー社の担当者の努力の賜物である。ここに編集者として深謝したい。